*加齢黄斑変性*

加齢により網膜の中心である黄斑部に障害が生じ、見ようとするところが見えにくくなったり、ゆがんで見えたりする病気です。加齢黄斑変性は、一般的にはなじみの薄い病名ですが、欧米では成人の失明原因の第1位です。日本でも高齢化と生活の欧米化により近年増加していて失明原因の第4位です。発症すると車の運転、ゴルフ、読書など、生活の中での楽しみが奪われることもあります。50歳以上の約1%にみられ、女性より男性に、また高齢になるほど多くみられます。発症のリスクを高めるものとしては、加齢のほかには、喫煙や遺伝、太陽光なども報告されています。


加齢黄斑変性の種類

*正常眼底写真

正常眼底写真

正常な21歳の方の正常な眼底写真です。黄斑部という視神経の右側に見える部分には異常は見られません。黄斑部は特別な構造になっていて、細かいものを識別したり、色を見分ける働きをもった部分で、網膜の中では一番大切な場所です。この部分が障害される黄斑変性には大きく分けて、滲出型と萎縮型があります。

*滲出型加齢黄斑変性

滲出型加齢黄斑変性

滲出型は網膜に栄養を送る血管から異常な血管(新生血管)が発生します。新生血管は正常な血管ではないため、血液の成分が漏れ出たり、血管が破れて出血などをおこし、黄斑部が障害されます。写真の黄斑部には、黄色い浸出液の漏れやわずかに出血もあります。進行が早く、治療をためらっていると、深刻な状態になることも少なくありません。

滲出型加齢黄斑変性

*萎縮型加齢黄斑変性

加齢により網膜の組織が徐々に萎縮します。萎縮型は進行がゆるやかで、視力の低下もゆっくりである場合が多いです。ですが、滲出型に移行することもあるため、定期的な検査は必要です。


加齢黄斑変性の症状

加齢黄斑変性の症状

最初は見ようと思う中心がゆがんで見えたり、ぼやけたりします。さらに進行すると、見ようと思う中心が見えなくなり、視力が低下します。しかし、目は左右二つあるので、片目のみに症状が出た場合は発見が遅れることもあります。視力低下は徐々に進行し、治療をしないと多くの患者さんが生活が不自由になるほど視力が低下します。萎縮型と滲出型では滲出型の方が進行が早く視力悪化も重い場合が多いです。

(イラストは株)千寿製薬のご協力による)


加齢黄斑変性の治療

滲出型では新生血管をおさえる硝子体内に注射をする抗VEGF療法という治療法が一般的です。そのほかにも、光に反応する薬剤を体内に注射、弱いレーザーを照射して新生血管を破壊する光線力学的療法などで黄斑部へのダメージを食い止める治療もあります。萎縮型では現在有効な治療法がないので、予防のための生活習慣の改善やサプリメントの服用が中心になります。


加齢黄斑変性の予防

  • 禁煙・・・喫煙は最大の危険因子です。禁煙をおすすめします。
  • 肥満、高血圧、脂質異常・・・程度によっては危険因子の一つと考えられます。
  • 紫外線予防・・・太陽光などの紫外線は網膜にダメージを与えると言われています。サングラスや帽子で直射日光から目を守りましょう。
  • 食事バランス・・・抗酸化ビタミンと言われるビタミンE,ビタミンC,ベータカロチンを多く含む野菜や果物、ミネラルを多く含む海藻、黄斑を保護すると言われているルテインを含む緑黄色野菜、オメガ3脂肪酸を含む魚類など、バランスよく食べるようにしましょう。
  • サプリメント・・・加齢黄斑変性の予防のためにいろいろなサプリメントが発売されています。萎縮型の場合には、有効性が証明されているものもあります。医師と相談の上、服用を検討されるのも一つの方法です。

加齢黄斑変性チェックシート

アムスラーチャート
  1. 約30センチ離れる(メガネやコンタクトレンズはつけたまま、老眼の始まっている方は老眼鏡)。
  2. 片目を閉じて、表の中心の黒い点を見つめる。必ず片目ずつ!
  3. 線がゆがんで見えたり、中心がぼやけて見にくくないかチェックしてください。早期発見が重要です。